医業と個人を横断して、“科の隙間”に放置された判断を引き受ける。
そして、決めるのは——最後まで理事長です。
理事長の先生のまわりには、すでに専門家が揃っているはずです。医療専門の税理士、社会保険労務士、診療報酬や集患を見る医療経営コンサル、日々の管理を担う院外事務長。みな、それぞれの領域のプロです。
それでも、ふと立ち止まったときに気づくことがあります。会社(医療法人)のお金は回っている。診療も順調だ。なのに、自分自身の——引退後の暮らし、個人の資産、家族へどう渡すか——という一番重いテーマだけが、何年も手つかずで残っている。この記事は、なぜそれが起きるのか、そしてそこにこそ私たちの仕事がある、というお話です。
私たちは、この前提から違うと考えています。日々、膨大な検査値とカルテを読み、一瞬で診断を下している先生方が、数字に弱いはずがありません。弱いのではなく、会計の数字を「読む訓練」を受けていないだけです。医学の言語と、会計の言語が違う。ただそれだけのことです。
だから必要なのは「見える化」よりも前に、翻訳です。会計の数字を、先生がご自分の判断に直結できる言葉に置き換える。そうすれば、診断と同じスピードと正確さで、経営の判断も下せます。
翻訳さえあれば、理事長は誰より速く、正しく決められる。
そしてもう一つ。世間の医療財務コンサルの多くは「黒字化」「経営改善」を掲げます。それは、弱った医療機関を立て直す“再生”の話です。順調なクリニックの理事長が本当に求めているのは、立て直しではありません。数字を翻訳して、次の判断を軽くすること。それが、私たちの考える医療法人の財務です。
医療法人が剰余金を配当できない(非営利である)こと、その結果として内部留保が貯まりやすいことは、事実です。MS法人や役員報酬の設計が論点になるのも、そのとおりです。これらは、税理士の先生が扱う大切な領域です。
ただ、順番を間違えてはいけません。節税という手段から入ると、判断が手段に引きずられます。先に決めるべきは、理事長ご自身の人生の目的です。あと何年、診療を続けたいのか。引退後はどう暮らしたいのか。資産を家族にどう渡したいのか。
節税という木を見て、理事長の人生という森を失うな。
目的が定まって初めて、医療法人のお金と理事長個人のお金を一体の絵として設計できます。MS法人や役員報酬は、その絵が描けたあとに、目的へ近づけるための手段として選ぶもの。具体的な制度の活用は、税理士など専門家と一緒に詰めていけば安全です。順番は、目的が先・手段は後。
ここが、この記事で一番お伝えしたいことです。専門家に任せれば楽になる——これは、半分しか本当ではありません。なぜなら、それぞれの専門家は、自分の“科”の中にしか役割(と報酬)が設計されていないからです。
一人ひとりは、間違いなく優秀です。問題は、どの科にも属さない判断が必ず生まれること。とりわけ、理事長個人の資産・引退後・家族へどう渡すか——医業と個人にまたがるテーマは、どの専門家の担当範囲にも、報酬の設計にも乗りません。だから、誰のインセンティブにも引っかからないまま、科の隙間に落ちて放置されます。
そして理事長ご自身も、それが緊急ではないために、日々の診療に追われて後回しにする。緊急ではないが、最も重要なもの。それが、何年も手つかずで残り続けます。
「丸投げ」では、一番重い判断は、誰にも拾われない。
各科の専門家が優秀であることは、大前提です。私たちは、その先生方を否定もしませんし、置き換えもしません。私たちが引き受けるのは、どの科にも乗らないまま放置されてきた、一番重い判断そのものです。
医業のお金も、理事長個人のお金も、横断して一つの絵として診る。誰も拾わなかった隙間を、正面から拾う。世間で言う「丸投げ」は、実は誰も全体を見ていない状態です。私たちがするのは、その逆——本当の意味で「任せられる」状態をつくることです。
誤解されたくないので、はっきり書きます。私たちは、答えやビジョンを“与える”先生ではありません。これまで科の隙間に放置されていた一番重い判断を、理事長ご自身が、数字に裏打ちされた形で、自分でクリアに決められる状態をつくる。それだけです。主役は、最初から最後まで理事長です。
どう生き、どう渡し、いつ退くか——それを決めるのは、いつでも先生ご自身です。私たちはその決断が、勘や雰囲気ではなく、医業と個人の数字に裏打ちされたものになるよう、隣で支えます。
整理します。医師は数字に弱いのではなく、翻訳されていないだけ。MS法人も役員報酬も、目的のあとに来る手段にすぎない。そして専門家への「丸投げ」では、科の隙間に落ちる一番重い判断——理事長個人の資産・出口・人生——が、構造的に放置される。
私たちが熊本で、そして福岡・佐賀でお手伝いしているのは、まさにその後回しにされてきた領域です。医業と個人を横断して数字を翻訳し、目的から設計し、各科の専門家を一つにまとめる。緊急ではないが最も重要なものを、何年も放置させない。それが、私たちの考える“財務の角度からの医療法人の財務コンサル”です。
税理士や医療経営コンサルがいても、相談する意味はありますか?
税理士は税務、医療経営コンサルは診療報酬や集患——それぞれの領域のプロで、欠かせない存在です。ただ、各専門家はご自分の領域の中で役割が設計されているため、領域の隙間に落ちる判断、とくに理事長個人の資産や引退後といったテーマは、どこにも拾われずに残りがちです。私たちはその隙間を、医業と個人を横断して引き受けます。
クリニックは黒字です。それでも財務の相談は必要ですか?
むしろ順調なうちが好機です。私たちがするのは経営の立て直しではなく、数字を翻訳して理事長が「次にどう動くか」を速く決められるようにすること。医師の先生方は数字が苦手なのではなく、読む訓練を受けていないだけで、翻訳さえあれば誰より速く正しく判断されます。
内部留保が貯まってきました。MS法人や役員報酬で対策すべきですか?
いずれも有効な手段になり得ますが、手段から入るのは順番が逆です。まず理事長ご自身がこの先どうしたいか(目的)を決め、そのうえで医療法人と個人のお金を一体で設計する。節税はその最後に効かせるものです。具体的な制度の活用は、税理士など専門家と一緒に検討するのが安心です。
いきなり契約や節税の話はしません。今、何が後回しになっていて、何に迷っているのか。それを一緒に整理するところから始めます。ご相談は、熊本・福岡・佐賀へ私たちがお伺いする訪問を基本に、オンラインでも承っています。
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