中小企業に、強制はされません。本当に急ぐべきは、システム対応ではなく、
自社のリース負担を含めた“財務の実像”を、いまつかんでおくことです。
2027年4月に始まる新リース会計基準——最近、この話題を耳にする機会が増えたのではないでしょうか。会計ソフト会社や税理士から「これからは、すべてのリースが帳簿に載る(オンバランスされる)。今から準備を急ぎましょう」という案内が、熊本の経営者のもとにも届き始めています。締め切りを示されると、慌てて対応しなければ、という気持ちになります。
でも、判断を急ぐ前に、確かめてほしいことがあります。その「急げ」は、本当にあなたの会社に当てはまるのか。そして、毎月払っているリースも、決算対策として売られる“節税”のリースも、入り口の数字だけで判断していないか。この記事は、制度の解説ではありません。自社のリースの“中身”と“本当の負担”を、財務の目でどうつかむか、というお話です。
この案内は、間違いではありません。ただ、大事な前提が抜けています。新リース会計基準が“強制”されるのは、上場企業や、監査を受ける大きな会社です。中小企業は、これまでどおり「中小企業の会計に関する指針」に沿った処理が認められていて、すべてのリースを帳簿に載せることを、強制されるわけではありません。
では、なぜ中小の社長のもとにまで「急げ」の声が届くのか。正直に言えば、その“急げ”の先にあるのは、多くの場合、会計ソフトの乗り換え、顧問報酬の上乗せ、リース契約の棚卸し作業です。大企業向けの締め切りを、そのまま中小に当てはめて、不安をあおる。中小の社長は、慌ててシステムを買う必要はありません。
大企業の締め切りを、中小のあなたの締め切りに、すり替えられていないか。
多くの解説は、ここで話を終えます。「中小は対象外」。確かに、帳簿上の処理としては、そのとおりです。でも、“帳簿に載せなくていい”ことと、“負担がない”ことは、まったく別の話です。ここには、二つの油断があります。
オンバランス、使用権資産、リース負債——聞き慣れない言葉ですが、かみ砕くとこうです。リースで借りているモノ(複合機、車両、設備、店舗)を「資産」として、その支払い義務を「負債」として、帳簿に両方載せるのが新基準です。つまり、借りているだけなのに、帳簿の上では“借金を抱えた会社”に見えるようになる。中小はこれを載せなくてよいだけで、「これから何年、いくら払い続ける義務があるか」という負担そのものは、載せても載せなくても、実在しています。載せないから、社長ご自身がその総額を見ていない——そこが、いちばん怖いところです。
会計のルールは、まず大企業に適用され、時間をかけて中小へ下りてくる——これまで、何度も繰り返されてきた流れです。今は「中小は対象外」でも、いつ「中小にも」と言われても、おかしくありません。そのとき慌てるより、いまのうちに自社のリース負担をつかんでおくほうが、はるかに楽です。
そして、忘れてはいけないのが銀行です。あなたが銀行に決算書を出し続ける限り、このリースの負担は効いてきます。もしリース負債が帳簿に載れば、負債が増え、自己資本比率は下がって見える。銀行から見た会社の姿が、変わるのです。私たちは、決算を一枚の図にして、自己資本比率や借入への依存度が“銀行の目”にどう映るかを確かめます。リースの負担は、その絵の中に、確かに存在しています。
載せていないだけで、負担は消えていない。消えていないものは、いつか表に出る。
新基準では、会計上の処理と税務上の処理がズレます(会計では載せても、法人税法上は従来どおりの扱いが整理されています)。その結果、別表調整や税効果会計といった手続きが必要になる——これは事実で、そこは、顧問税理士の先生が扱う大切な領域です。私たちが立ち入る話ではありません。
ただ、社長にとって本当に大事なことは、その手続きの手前にあります。「その複雑な処理が要るほど、自社はリースにどれだけ依存しているのか」「その負担は、会社の体力に見合っているのか」。手続きの正確さ(税理士の仕事)ではなく、財務の実像をつかむこと(経営者の判断)。私たちが見るのは、こちらです。
手続きが正しいかは、税理士に。負担が会社の体力に見合うかは、財務の目で。
リースには、性格の違う二つの顔があります。でも、社長がつまずくポイントは、実は同じです。
見た目はまったく違う二つですが、落とし穴は、同じ一点です。社長が、自社のリースの“中身”と“本当の負担”を、財務の目でつかんでいない。入り口の数字(節税額・毎月の支払い)だけで判断し、出口と総額を見ていない。ここが、共通の弱点です。
ひとつ、正確に補足します。“節税”のリース(出資)は、今回の会計基準の変更で、直接なくなるわけではありません。あれは、リースを「借りる側」ではなく「出資する側」の話で、今回の借手向けの会計基準とは、別の軸だからです。だからこそ、こちらも別途、入り口だけでなく出口まで中身を確かめる必要があります。
税理士の先生が手続きを、リース会社が契約を担う。それぞれの役割は、それぞれに正当です。私たちが引き受けるのは、そのどれにも乗らない「自社は結局、リースでどれだけの負担を背負っていて、それは会社の体力に見合うのか」という一番の判断——契約の中身と、自社の決算の数字を、横断して一枚の絵で見ることです。
ただし、私たちが読むのは財務とスキームの構造まで。契約が法的に有効かといった精査は、提携する弁護士などの専門家と連携して進めます。財務の目と法律の目を、それぞれの専門家で組み合わせる、ということです。
誤解のないように書きます。私たちは、リースを頭から否定しているわけではありません。リースは、まとまった資金を手元に残しながら設備を使える、有効な手段です。決めるのは、あくまで社長ご自身です。私たちがするのは、その判断を、業者の“急げ”や節税の売り文句ではなく、自社の決算の数字に裏打ちされたものにすること。それだけです。
2027年の締め切りに間に合わせることよりも、自社がいま、リースでどれだけの負担を背負っているかをつかむ。それは、いつ制度が変わっても、銀行に決算書を出す限り、ずっと効いてきます。
整理します。「2027年オンバランス、急げ」は、中小に強制される締め切りではない。「中小は関係ない」は油断で、載せなくても負担は実在し、いつ中小に下りてきてもおかしくなく、銀行に決算書を出す限り効いてくる。別表調整や税効果会計は税理士の領域で、社長が見るべきは、その手前——財務の実像です。
私たちが熊本で、そして福岡・佐賀でお手伝いしているのは、この「自社のリース負担を含めた財務の実像を、いまつかむ」ことです。それは、銀行から見た会社の健康状態を一枚の図で確かめること。新リース会計基準は、その負担がいずれ表に出てくるという“合図”にすぎません。合図に慌てるのではなく、中身を先につかんでおく。決めるのは、最後まで社長です。
新リース会計基準(新リース税制)は、中小企業にも関係ありますか?
帳簿上の処理としては、中小企業は「中小企業の会計に関する指針」で従来どおりが認められ、すべてのリースの計上を強制されるわけではありません。ただ、載せなくてもリースの支払い義務(負担)は実在しています。会計ルールは大企業から中小へ広がってきた流れがあり、将来適用される可能性もあります。何より、銀行に決算書を出す限り、その負担は会社の評価に効いてきます。「対象外だから関係ない」で終わらせず、自社の負担をつかんでおくことをおすすめします。
リースが帳簿に載ると、銀行から見た会社の姿は変わりますか?
変わり得ます。新基準では、リースで借りているモノを「資産」、その支払い義務を「負債」として帳簿に両方載せます。負債が増えれば、自己資本比率などの指標は下がって見えます。借りているだけなのに、帳簿の上では負担を抱えた会社に見える、ということです。私たちは決算を一枚の図にして、その負担が銀行の目にどう映るかを一緒に確認します。具体的な会計・税務処理については、顧問税理士にご確認ください。
節税目的ですすめられたリース(出資)は、新基準でなくなりますか?
直接なくなるわけではありません。航空機や船舶などに匿名組合を通じて出資するタイプは、リースを「借りる側」ではなく「出資する側」の話で、今回の借手向け会計基準の変更とは別の軸だからです。ただ、入り口の経費だけで判断せず、出口で資金が戻るか・途中で解約できるか・誰がリスクを負うかを、契約の中身と自社の決算から確かめることが大切です。税務処理の可否は、顧問税理士にご確認ください。
いきなり「対応しろ・やめろ」とは言いません。いますすめられている話と、自社の決算の数字を一緒に開いて、リースを含めた財務の実像を確かめるところから始めます。ご相談は、熊本・福岡・佐賀へ私たちがお伺いする訪問を基本に、オンラインでも承っています。
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