SALES & GROSS PROFIT | KUMAMOTO

会社の調子を、
“売上”で計っていませんか。

売上は増えたのに、なぜか金が残らない。忙しいのに、楽にならない。
その違和感の正体は、景気でも社員でもなく——「物差し」にあります。

「今月の売上、どうですか」。銀行員も、同業の集まりの仲間も、家に帰れば家族まで——経営者に向けられる質問は、いつも売上です。だから社長も、売上が伸びた月は機嫌がよく、落ちた月は眠りが浅くなる。熊本の経営者と話していて、いちばん多く目にする光景です。

でも、この記事で確かめたいのは、その一喜一憂の「物差し」そのものです。結論を先に言います。会社の体力を決めているのは、売上ではありません。粗利(売上総利益)です。固定費を払うのも、社員の給料を払うのも、借入を返すのも、ぜんぶ粗利。売上は、その入り口にすぎません。AI活用の記事で「売上でなく粗利で経営を計る話は、改めて」とお約束しました。今回が、その話です。

論点 1 / “売上で計る”への疑問

「売上1億円」は、会社の体力を語らない

世間の常識 会社の規模も調子も、まず売上で語る。目標は売上目標、評価は前年比の売上。「年商◯億円」が、会社の強さの代名詞。

売上は、たしかに分かりやすい数字です。請求書を見れば毎日つかめるし、誰に話しても伝わる。でも、一つだけ、決定的に語ってくれないことがあります。その売上のうち、いくらが「会社に残る稼ぎ」なのかです。

売上には、仕入先や外注先へそのまま通り抜けていくお金が混ざっています。売上からその通り抜け分(売上原価)を引いた残り——粗利こそが、会社が本当に稼いだ額です。そして、家賃も、リース料も、社員の給料も、借入の返済も、すべてこの粗利の中から払われる。つまり、会社の体力とは、粗利の厚みのことなのです。

単純な例で並べてみます。

A社:売上 1億円
粗利率20%
粗利 2,000万円
仕事量は多く、通り抜けるお金も多い
B社:売上 6,000万円
粗利率40%
粗利 2,400万円
売上はA社の6割、稼ぎはA社より上

※ 話を単純にした架空の例です。実際の比較は業種・費用構造によって変わります。

「年商1億」のA社と、「年商6,000万」のB社。世間の物差しではA社が上です。でも、固定費と給料を払う原資——体力——で見れば、B社のほうが厚い。しかも、B社のほうが仕事量は少なく、社長と社員の消耗も少ないことがあります。「売上は大きいのに、金が残らない。忙しいのに、楽にならない」という、あの違和感の正体はここにあります。売上という物差しでは、その差が見えないのです。

売上は「通り抜けるお金」まで含んだ数字。会社の体力は、粗利の厚みで決まる。

論点 2 / 値引きの、本当の値段

値引きで売上を守ると、粗利が溶ける

世間の常識 競合に取られるくらいなら、値引きしてでも受注を守れ。下がった単価は、数量でカバーすればいい。

売上を物差しにしている限り、この考えは合理的に見えます。値引きしても、数が出れば売上は守れるからです。でも、粗利を物差しに替えた瞬間、値引きの景色は一変します。値引いた分は、売上から減るのではありません。ほぼ全額、粗利から減るのです。仕入や外注のコストは、値引きしても一円も安くなってくれないからです。

たとえば粗利率30%の会社が5%値引きすると、売上の目減りは5%でも、粗利は30%のうち5%分——つまり約6分の1が消えます。では、値引き前と同じ粗利を確保するには、どれだけ多く売らなければならないか。単純計算で、こうなります。

もとの粗利率5%値引きした場合10%値引きした場合
粗利率 20%の会社数量 約33%増が必要数量 2倍が必要
粗利率 30%の会社数量 約20%増が必要数量 約50%増が必要
粗利率 40%の会社数量 約14%増が必要数量 約33%増が必要

※ 値引き前と同じ粗利額を保つのに必要な販売数量の増加率を、単純化して計算した目安です。実際は費用構造や取引条件で変わります。

粗利率20%の会社が10%値引きしたら、同じ稼ぎに戻すだけで、売る数を2倍にしなければならない。2倍売るということは、仕入も、配送も、現場の残業も、ほぼ2倍になるということです。売上の数字は守れたように見えて、実際は「前より忙しく働いて、前より稼げない会社」に近づいていく。これが、値引きの本当の値段です。

そして、この理屈は逆向きにも働きます。値上げできた分は、ほぼ全額、粗利に乗るのです。5%の値上げが通れば、粗利率30%の会社なら粗利は約6分の1増える。だからこそ、原価が上がり続けるいまの局面で、値決めは経営のいちばん大きな判断の一つになっています。安易に勧めるつもりはありません。ただ、値引きも値上げも、売上でなく粗利でその影響を数えてから決める——この順番だけは、間違えないでいただきたいのです。

値引き分は、売上からではなく、粗利から出ていく。値決めの損得は、粗利で数えてから決める。

論点 3 / “売上が減る”怖さの正体

売上が減っても、会社が強くなることがある

世間の常識 売上の減少は衰退のサイン。前年割れは、何としても避けるべきだ。

売上を物差しにしている限り、前年割れは「負け」です。でも、粗利で見ると、まったく別の景色があり得ます。手間ばかりかかって粗利の薄い仕事を思い切って手放し、売上が1割減った。けれど粗利はほとんど減っていない——こういう会社は、数字の上では「縮んだ」ように見えて、実際は強くなっています。

仕事量が減った分、現場に余裕が生まれる。無理な安値受注のための残業が消える。空いた手で、粗利の厚い仕事を丁寧にやれるようになる。運転資金も軽くなり、手元の現金はむしろ厚くなることがあります。売上という見た目は縮んでも、体力はついている。逆に、粗利の薄い仕事をかき集めて売上の見た目を保っている会社は、大きく見えて、体力を削っています。

誤解のないように言えば、売上の減少がいつでも良い知らせだ、という話ではありません。粗利まで一緒に減っているなら、それは正真正銘の警報です。申し上げたいのは一点だけ。売上の増減だけでは、会社が強くなっているのか弱っているのか、判定できないということです。判定には、もう一つの数字——粗利——が要ります。

売上は会社の「見た目の大きさ」。粗利は「筋肉」。見た目が縮んでも、筋肉が残っていれば、会社は強い。

論点 4 / 本当の問題(この記事の核心)

なぜ社長は売上で計ってしまうのか——粗利が「社長の言葉」になっていないから

ここまで読んで、「そんなことは分かっている」と思われた社長も多いはずです。粗利が大事。当たり前です。では、なぜ多くの会社で、いまも売上が物差しであり続けるのか。

理由は単純で、売上は毎日見えるのに、粗利は見えないからです。売上は請求書の合計でその日のうちに分かる。ところが粗利は、決算書や試算表の中に「売上総利益」という勘定科目の言葉で埋まっていて、数か月遅れでしか届かない。しかも、その一行を見ただけでは、どの商品が、どの取引先が、どの事業が粗利を稼ぎ、どれが粗利を食い潰しているのかまでは、何も分からない。

つまりこれは、社長の理解力の問題ではなく、翻訳の問題です。決算書は、税金の計算と報告のための言葉で書かれています。それを「経営の判断に使える社長の言葉」に翻訳する役が、これまで誰の担当にもなっていなかった、だけのことです。

私たちがするのは、御社の粗利の「生まれ場所」を、見えるようにすることです

売上を上げましょう、とも、この値段で売りましょう、とも、いきなりは言いません。私たちが最初にするのは、決算書と試算表を社長の言葉に翻訳して、御社の粗利がどこから生まれ、どこで漏れているのかを、見えるようにすることです。商品ごと、取引先ごと、事業ごとに粗利を並べると、「稼ぎ頭だと思っていた仕事が、実は粗利を食い潰していた」という発見が出てくることがあります。

そこまで見えれば、話は早い。値決めをどうするか、どの仕事に力を入れ、どの仕事を手放すか、社員の給料と会社の手元資金に粗利をどう配分するか——判断の材料を、雰囲気ではなく数字でそろえていきます。選ぶのは、最後まで社長です。私たちは、その判断が狂わない物差しを、隣で一緒に持ちます。

なお、税理士の先生の仕事と競合する話ではありません。決算書を正確に締める——過去の数字を確定させる——のは税理士の先生の専門であり、その正確な決算書があってはじめて、私たちの翻訳が成り立ちます。過去を正しく締めるプロと、その数字を未来の判断に翻訳する伴走者。役割の違う両輪だと考えています。

そして、この「粗利の物差し」は、これまでの記事とすべてつながっています。金利の記事でお話しした「赤字にならない最低ライン(損益分岐)」は、粗利率が分からなければ計算できません。AI活用の記事でお話しした「効率化の果実を社員と会社に配る」話も、一人当たりの粗利が物差しでした。粗利は、経営のあらゆる判断の共通の物差しなのです。

いちばん大事なこと

売上を捨てろ、という話ではありません。決めるのは社長です

誤解のないように書きます。この記事は、「売上はどうでもいい」という話ではありません。売上は仕事の量と市場からの支持を映す大事な数字ですし、値引きにも、新規の取引を開く布石や、繁忙の谷を埋めるためなど、戦略として意味を持つ場面があります。粗利率の高さだけを追って仕事を絞りすぎれば、会社が縮んでしまうこともある。率と額の両方を見る必要があります。

申し上げたいのは、順番です。売上で一喜一憂する前に、粗利という物差しを手元に持つこと。値引きも、仕事の選別も、給料の配分も、その物差しで数えてから、社長ご自身が決める。周りの「年商いくら?」という声に合わせるのではなく、自社の体力を自分の物差しで計る。それが、この記事でお伝えしたかったすべてです。

まとめ

会社の体力は、売上でなく、粗利で計る

整理します。固定費と給料を払う原資は売上ではなく粗利であり、会社の体力は粗利の厚みで決まる。値引き分は売上からでなく粗利から出ていき、同じ稼ぎに戻すには想像以上の数量増が要る——だから値決めの損得は粗利で数えてから決める。売上が減っても、粗利が守れていれば会社はむしろ強くなれる。そして、粗利が物差しにならないのは社長のせいではなく、決算書が「社長の言葉」に翻訳されていないから。商品ごと・取引先ごとに粗利の生まれ場所を見えるようにすれば、値決めも、仕事の選別も、配分も、数字を根拠に選べるようになります。

私たちが熊本で、そして福岡・佐賀でお手伝いしているのは、この「決算書を社長の言葉に翻訳して、会社の体力を粗利で計り直す」ことです。決めるのは、最後まで社長です。

こんな社長に

  • 売上は伸びているのに、手元にお金が残っている実感がない
  • 競合との価格勝負が続き、値引きの判断基準を持てていない
  • どの商品・どの取引先が本当に稼いでくれているのか、数字で見たことがない
  • 熊本・福岡・佐賀で、自社の数字を経営の言葉に翻訳して一緒に考えてくれる相談相手を探している

よくある質問

粗利とは、決算書のどの数字のことですか?

決算書(損益計算書)の「売上総利益」のことです。売上高から売上原価(仕入・材料・外注費など、売上に直接ひもづくコスト)を引いた額で、会社が本当に稼いだ額にあたります。中身は業種で変わります。小売や卸なら仕入、建設なら材料と外注費、製造なら材料と製造の人件費など。税理士の先生が締めた決算書にすでに載っている数字なので、新しく何かを計算する必要はありません。要るのは、その一行を商品ごと・取引先ごとに分解して、経営の判断に使える形に翻訳することです。

値引きして売上を守るのは、間違いなのでしょうか?

一律に間違いとは言えません。新規取引の布石や繁忙の谷を埋めるためなど、値引きが戦略として意味を持つ場面はあります。ただし、値引いた分は売上からではなくほぼ全額粗利から出ていくため、影響の大きさは売上でなく粗利で数える必要があります。たとえば粗利率20%の会社が10%値引きすると、同じ粗利を保つには販売数量をおよそ2倍にする必要があります(単純計算の目安)。その計算を見たうえで、それでもやる価値があるかを社長が判断する——この順番であれば、値引きは戦略になります。数えずにやる値引きだけが、危険です。

粗利で経営を計るには、何から始めればいいですか?

最初の一歩は、直近の決算書・試算表の粗利を、商品ごと・取引先ごと・事業ごとに分解してみることです。どこで粗利が生まれ、どこで食い潰されているかが見えると、値決め・仕事の選別・人の配置といった判断の土台がそろいます。売上目標をやめる必要はありません。売上と粗利を並べて見る習慣に変えるだけで、判断はずいぶん変わります。私たちは、この分解と翻訳を社長と一緒に行っています。過去の数字を正確に締める税理士の先生の仕事と競合するものではなく、その数字を未来の判断に使う部分をお手伝いする役割です。

御社の粗利の「生まれ場所」を、一度いっしょに見てみませんか

いきなり「値上げしましょう」「この仕事をやめましょう」とは言いません。まず、決算書と試算表を社長の言葉に翻訳して、どの商品・どの取引先が粗利を稼ぎ、どこで漏れているのかを、一緒に開くところから始めます。ご相談は、熊本・福岡・佐賀へ私たちがお伺いする訪問を基本に、オンラインでも承っています。

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